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一. 愛花はしゃがみ込んで必死に耐えていたが、下腹部にじんじんと沸き起こる甘い疼きはおさまるどころか、ますます強まるばかりだった。 |
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…と湿ってきたのが自分でもはっきりとわかる。 前触れもなしに突然沸き起こる、甘くせつない疼き。 |
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「愛花さま!」 |
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本当は股間に指を伸ばし、ふんどしをずらしてひちゃひちゃと思いっきりくじりたい。 しかし、できない。 冬馬の前では。 今の愛花にできることは、必死にこらえることだけだった。 ふんどしに広がっているであろう恥ずかしい染みを見られるのを恐れて、愛花は着物の裾を固く握り、そのまま押し下げた。 |
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「何事だ?!」 父である勘助も駆け寄ってきた。 どうやら追っ手は愛花達に切り伏せられ、退却したらしい。 「お前たち怪我はないか?!」 それがいつもの疼きであることを見取って勘助は少し安心したようだが、愛花の顔を覗き込むように言った。 「どうだ、歩けるか?」 |
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「は…い…」 そう答えて立ち上がろうとしたものの、愛花は腰が抜けたようになってその場にへたり込んだ。 |
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「いかぬな…。一刻も早く此処を離れねばならん。冬馬、おぶってやれ」 「さっ、愛花さま」 冬馬がしゃがみ込み、その広い背中を向ける。ためらいながらも愛花は身を預けた。 そして三人は山道を駆け下りてゆく。 |
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二. 一方、愛花は全身の力を込めて冬馬にしがみつき、必死に疼きに堪えていた。 「……う……っ!」 低い嗚咽が漏れ、一瞬、身体がびくびくっとこわばる。 |
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