◇ふんどしブーム来たる!◇
   

 ふんどしカレンダーの衝撃はグラビアやAVにも大変な影響を与えました(AV界については後述)。90年代前半のグラビア界には一大ふんどしブームが起きたのです。
  ブームの主力は当時、AV企画と連動した美少女路線を確立し「BEPPIN」「デラべっぴん」「すっぴん」でグラビア界を席巻していた英知出版。そしてマニアックな芸風が売りの少年出版社(および親会社の白夜書房)です。
  英知出版はそれまでの美少女路線にふんどしがぴったりハマり、「今年はウマ年ならぬ美少女のフンドシだっ!」という名コピーのもと、海外ロケでエスニックな柄のふんどしを締めたトップレス美少女のセクシーカットを数多く送り出しました。別ページのリストを見ていただくとわかりますが、90年はなんとほぼ毎月何らかの形で雑誌にふんどしグラビアを発表していたことになります。
 一方、少年出版社は91〜94年にかけて女子校生グラビア誌「クラスメイトジュニア」に「現役女子校生おすもうで勝負!」という企画グラビアを連載していました。素人女子校生がさらし布のまわしを締めて相撲勝負をするという内容です。
  雑誌にやや遅れるかたちで、写真集でもふんどしは大人気となりました。例えば1989年に発売されたふんどし写真集は3冊だけでしたが、翌90年には8冊、91年、92年も各8冊、93年は7冊と、かなりのハイペースで出版されています。前述の2社以外にも老舗の近代映画社ワニブックス、今はなきビックマン大陸書房といった出版社がふんどしを大プッシュしたのです。

  そして特筆すべきはグラビア誌に進出したことにより、ふんどしは女相撲やSMの付属品ではなく、女性を飾るフェティッシュなコスチュームとして独立して鑑賞されるようになったという点。これが大変画期的であり、この大ブームの真価であると筆者は考えます。
 これら一連の動きは、それまで女性のふんどしを扱っていたメディアである「SM雑誌」と「ポルノ映画」が、「グラビア誌」と「AV」に完全に取って代られた、ということでもありました。

 
 
「Beppin」(英知出版)
 
 
「クラスメイトジュニア」
(少年出版社)
  ・・・と、このように言葉で書くのは簡単です。しかし想像してください、雑誌・写真集・ビデオといったかたちで毎月のように美少女達のふんどし姿が世に溢れ、影響を受けた一般女性までもがふんどしを締めてお立ち台に立つ・・・。こんな事態は前代未聞、空前絶後といっていいでしょう。
  90年代最初の数年は我々ふんどしファンにとって夢の季節、「サマー・オブ・ラブ」ならぬ「サマー・オブ・フンドシ」だったのです!!

◇ルネッサンスの終焉◇

  この空前のふんどしブームも、残念ながら93年以降は徐々に衰退していきます。ブームが爆発的であればあるほどすたれるのも早いのです。単純に「読者にあきられた」という以外にもその要因はいくつか考えられますが、直後に起きたボンデージやヘアヌードのブームも背景にあったと思われます。レザースーツやハイヒール、ボールギャグなどを使うボンデージは、かつてのふんどしグラビアの基本イメージであった和風テイストのSM的世界を一気に古臭いものにしてしまいました。そしてヘアヌードがなしくずし的に解禁されると、ヘア隠しのアイテムとして女性の股間をセクシーに包んでいたふんどしも無用の長物となっていったのです。ブームが過ぎれば後はすたれるだけでした。

◇復活したふんどしグラビア◇

  すっかり影を潜めていたふんどしグラビアの状況も21世紀に入ったあたりから、少しずつ変わってきました。「宮沢りえ」とともになつかしく語られるようになったブーム再燃の気運を後押ししたのは、いわゆる「着エロ」です。緑川のりこ・堀口としみ・名波はるかといったアダルトなグラビアアイドル達が極小ビキニや実用性のほとんどない創作コスチュームで大開脚を決め、斬新なエロティシズムを打ち出したのです。ブームは瞬く間に波及し、多くの着エロ系写真集やDVDが世に出ました。その中にはふんどしや、ふんどしテイストのある創作コスチュームが増えてきたのです。
  名波はるかは企画グラビアで何度かふんどしを締めていますし、ヘアを永久脱毛してまでもギリギリのグラビアに挑む堀口としみは、ブーム末期に壮絶なへアレスふんどしを締めた河合あすかを彷彿させ、その戦略は久留須ゆみに近いものがあります。他にも野本春香、藤原七虹、朝丘紗智 、当真ゆき、加藤晶子らのふんどし写真集が世に出ました。この「着エロ」ムーブメントを分析するならば、あれほど流行ったヘアヌードも既に当たり前で刺激のないものとなり、過去全盛を極めた「ギリギリまで見せない」というエロティシズムが見直されてきた、ということでなのでしょう。
  ネット上ではさる有名なお祭りの締め込み姿の少女画像が話題を呼び、それが原因で美少女ゲームやコミックにおいてふんどし少女をテーマにしたものが発売されるなど、他ジャンルでの動きも起こりました。
  そして、武田久美子と同時期から活動を続ける杉本彩がハードな調教シーンを演じた映画「花と蛇」(監督:石井隆)が2004年春に公開されます。「SMセレクト」「SMファン」といった黄金期のSM誌の緊縛師を務めた有末剛が担当したその緊縛は非常に容赦のない本格的な責めで、杉本彩は紫・白・赤の三種もの六尺を締めています。もちろん映画は大ヒット、大きな話題を呼びました。しかも杉本彩の赤裸々な告白やそのスタイリッシュな映像が女性からの賞賛も浴びたのです。ふんどしが単なるヘア隠しのアイテムとして使われた側面もありますが、世の人々にあらためてふんどしの持つセクシーさが強烈に印象づけられたことはたしかです。翌年には続編「花と蛇2 パリ/静子」も製作され、彼女は大スクリーンで再び美しいふんどし姿を公開してくれました。
 全盛期のブームには及びませんが昨今の盛り上がりは実に頼もしく、我々ふんどしファンは一息つけました。 この追い風がいつまで続くかはわかりません。しかし我々はそれを支え続け、今後も新たなふんどしアイドルが誕生するのを待ちたいと思います。

 
参考文献:「『奇譚クラブ』の人々」 北原童夢・早乙女宏美 河出書房新社
       「アイドルが脱いだ理由」 宝泉薫(編著) 宝島社
       「ウワサを追い越せ!'91」 石丸元章 飛鳥新社
       「ふんどしの話」 新穂栄蔵 JABB出版局

 

 

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