◇ふんどしコミックの歴史◇

◇大人向け・劇画系◇

 女ふんどしコミックといえば、まず大人向け、そして時代劇が想像されます。「土曜漫画」「漫画ゴラク」「週刊漫画タイムス」といった大人向け劇画誌を解説した「エロマンガ・マニアックス」(太田出版)によると、昭和40年代には歌川大雅の「女遊侠 ふんどしお玉」というお色気時代劇があったそうですが、昭和30年代〜40年代にかけての大人向けコミックは不明な点が多く、未だ本格的な研究は進んでいません。その全貌を捉えるには今後のさらなる調査研究が必要です。
  現在筆者も調査中ですが、劇画系の時代劇の場合、ありそうなわりには意外なほどふんどしが登場しません。作家側に「女性の下着は腰巻」という固定観念が強く、男装キャラや忍び装束のくノ一が登場しても腰巻かノーパンにしてしまうのです。
  筆者が今まで発見した中から挙げますと、小池一夫+ケン月影「葬流者」(ソールジャー)に登場する半次郎(桔梗)はふんどしを解く入浴シーンあり、尻っぱしょりでふんどしのお尻を出したりさらし&ふんどし姿のまま絶命するなど見せ場が多いです。森秀樹「ムカデ戦旗」の主人公・てんは褌一丁で川に飛び込むシーンがむっちりしたお尻描写と共に大変強烈です。映画化されたヒット作、小山ゆう「あずみ」の主人公・あずみも実はふんどしを締めており、ミニスカ着物からのふんチラや敵にふんどしを解かれて全裸にされるなど刺激的なシーンが多数あり。
  他にも武本サブロー「ホタル」「女忍者・蘭」、原万紀夫+ケン月影「おきゃん同心・羅夢」、篠原とおる「縁切り屋でございます」、ジョージ秋山「岡っ引き天牛」といったリイド社系のお色気時代劇コミックにも良質なふんどしシーンを確認しています。
  またエロ劇画におけるふんどしも、その研究は端緒についたばかりです。三条友美「少女戦士・美帆」は高校の女相撲部を舞台に異様なハードエロを展開し、好みは分かれるものの、女相撲ファンは必見でしょう。
 
葬流者(ソールジャー)
ムカデ戦旗
あ ず み
少女戦士・美帆
 

◇ふんどしコミックの元祖・永井豪

 70年代のSF、ギャグマンガ史に偉大な足跡を残した永井豪ですが、最初に大ヒットしたのが美少女のスカートめくりや裸を売りにした「ハレンチ学園」(1968)だったことからもわかるように、現在の美少女コミックにも多大な影響を与えています。永井作品は現在の目で見ると、子供のような無邪気さでホモ・レズ・SM・スカトロ・野外露出・人体改造など、ほとんどのフェティシズムの要素が描かれていて実に驚かされます。
  そして何よりふんどしシーンが非常に多いのです。女相撲以外にもふんどしを使った羞恥プレイ・セーラー服+ふんどしスタイルといった新たなファッションの創出…デビュー以来、現在までにこれだけコンスタントにふんどしを描き続けた作家は稀有ではないでしょうか? 何かふんどしに対する強い思い入れがあるとしか思えません。これは筆者の推測ですが、彼の出身地があの舳倉島のある石川県輪島市であることと何か関係があるのではないでしょうか。
  しかも 「おいら女蛮」は実写で、「ハレンチ紅門マン遊記」はアニメでビデオ化され、そのふんどしシーンを映像化しています。その質・量や影響力からいってもまさに「ふんどしコミックの祖は永井豪である」と当美術館では位置づけ、その代表的なものを紹介してみたいと思います。
 
あばしり一家(1969)  ・菊の助の友達・赤黄みどりがパンツがわりに柔道着の帯をふんどしにする
 ・主人公・菊の助が締め込み姿の刺客(自分と瓜二つ)に襲われる
ドロロンえん魔くん(1973)  ・妖怪に狙われたチィ子先生に変装するため雪子姫が越中褌を締める
おいら女蛮 (1974)  ・女尊学園にセーラー服+越中褌のスケ番グループ「クラパン党」が登場
けっこう仮面 (1974)  ・男装の麗人・面光一が赤の黒猫褌一丁で水泳の授業を受けさせられる
00スパイ春太郎(1981)?  ・ヒロインがインディアンに変装するために褌を締めさせられる(調査中)
まぼろしパンティ(1981)  ・相撲部を見学に行った女子が無理矢理女相撲をさせられる
ランボーセンセー(1986)  乙満湖学園で男女対抗すもう戦が行われる
ハレンチ紅門マン遊記(1994)  ・葵の御紋の入った六尺褌を締めた主人公・紅姫が毎回袴を下ろされる
ラブリーエンジェル(1996)  主人公の出張ソープ嬢が力士に極細まわしで相撲勝負を挑む
戦群(2001)  ・ヒロイン・桜子や女海賊の下着がふんどし
赤褌鈴乃介(2007)  ・父の形見の赤越中を締めた女剣士が活躍する
 
あばしり一家
ドロロンえん魔くん
けっこう仮面
ハレンチ紅門マン遊記
 
  自発的に締めるのではなく、締めざるをえない状況に追い込まれたヒロインが「ふんどしを締めさせられて恥ずかしい!」と感じる羞恥責めの心理をよく描いてくれるのが永井作品の特徴であり、大きな魅力です。
  中でも白眉は「ハレンチ紅門マン遊記」 で、主人公である紅姫が男装し紅光之介と名乗り、葵の御紋の入った六尺褌を着用しています。身分を明かすたびに大衆の面前でお供のスキさんカキさんに袴を引きずり下ろされるという羞恥プレイは素晴らしいアイデアで、究極とも言えるものです。他にもふんどし姿で入浴したり、眠っている間に襲われそうになっても相手は葵の御紋が畏れ多くてふんどしが解けない…などストーリーの中でふんどしを120%活用しており、ヒットはしませんでしたが実に見ごたえがあるふんどしコミックの傑作でした。
(この項つづく)
 
 

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