◇女ふんどし時代劇の歴史I◇

TEXT BY.はかせ。
 詳しい解説は別項に譲りますが生理帯・海女・女相撲など、明治以前の女性がふんどしを締めていたという事実は厳然として存在します。しかし時代劇においてそれが描かれるということはほとんどありませんでした。
  時代劇の世界にはふんどしを「下品なもの」として隠そうとする傾向があり、「半ダコ」などという野暮な創作下着に置き換えてしまったり最近では「さがり」と呼ばれる撮影用の見せふんでさえ俳優があまり着用しないくらいです。大衆演劇の世界の女剣戟を除けば、男性のふんどしよりさらに希少な女ふんどしが注目を浴びることはなかったのです。
 

◇ 女ふんどしを避け続けた時代劇

  70〜80年代のTV時代劇ではヌードや濡れ場などセクシーな場面が増え、おっぱいや太ももが大人の視聴者の目を楽しませていましたが、ここでも当然描かれるべきだった女ふんどしは巧妙に隠蔽されていました。
 例えばTVシリーズ「眠狂四郎」('72年の)第15話「三度笠の女は燃えた」に登場する大信田礼子。股旅姿の男装の麗人ですが、賭場で博打に負けてストリップをさせられそうになるシーンでも下着はしっかり半ダコです。セリフでは「下帯」と言っているのに!! ちゃんとふんどしを締めろ!
  JACのアクション時代劇「影の軍団」 ('80年)の第24話「戦慄!処女のいけにえ」では男装して潜入中の長谷真弓が入浴しますが、さらしと半ダコはつけたままです。 おいおいおいおい!  また時代劇スペシャル「おんな霧隠才蔵」('82年) で浅野ゆう子が滝に打たれるシーンでも忍者装束の下に着ているのはさらし+短い腰巻。そ、そんなバカな!
 
           
眠狂四郎
影の軍団
おんな霧隠才蔵
忍法かげろう斬り
快傑ライオン丸
 

◇ ミニスカ女忍者の誕生 ◇

 今ではすっかり定着したミニスカ着物+網タイツという女忍者スタイル。その嚆矢は「真田風雲録」('63年)の渡辺美佐子であると言われています。
  時代は少し下って1972年に登場した「忍法かげろう斬り」「快傑ライオン丸」ではミニスカ女忍者の魅力が爆発しています。 「忍法かげろう斬り」は太地喜和子范文雀が着る五十嵐九十九デザインのセクシー忍者衣装が売りでしたし、「快傑ライオン丸」は九条亜希子が激しいパンチラアクションとピンチで様々な角度からベージュのおパンツを見せまってお父さん方を悩殺。特撮ヒーロー物の名作としての評価だけでなく、唯一無二のパンチラTV時代劇として伝説化しています。

◇ 90年代に爆発したミニスカ女忍者

 そしてミニスカ女忍者は1980年代後半から90年代にかけてさらにメジャー化、いわゆる「くノ一ブーム」が巻き起こります。
  まず「水戸黄門」16部('86年)から登場した由美かおる演じる女忍者・かげろうお銀。定番となった入浴シーンとミニスカ着物+網タイツスタイルでのアクションが人気を呼び、「女忍かげろう組」('90年)、 「かげろう忍法帖」('95年)といった派生作品も生み出しました。
  それと呼応する形でキングレコード+松竹のセクシーVシネマ 「くノ一忍法帖」('91年) シリーズが大ヒット、 合計8作品が制作されました。 こちらはVシネマならではの過激さで、母乳・火炎などおっぱいビームは出すわ、股間から泡吹くわ、他人の胎児や鈴を子宮に保管するわ、無残に斬られる最期など、山田風太郎のエログロ趣味をかなり忠実に映像化しており強烈なインパクトでした。このブームはそれまでオーソドックスな忍者装束しかなかったJACの本格アクション時代劇にも影響を与え、 「徳川無頼帳」('92年) にはミニスカ着物スタイルが取り入れられているほどです。また当時隆盛を極めていたVシネマやAVの世界でも多くのフォロワー的作品が生まれています。
 これは奇しくもふんどし美少女ブームと時を同じくしているのが非常に興味深いのですが、登場するくノ一の下着はパンツ・レオタード・ノーパンばかり。ごく一部の例外を除いてこのくノ一ブームと女ふんどしがクロスオーバーすることがなかったのが惜しまれます。
 
           
水戸黄門第17部
女忍かげろう組
くノ一忍法帖
徳川無頼帳
かげろう忍法帖
 

◇ 女ふんどし時代劇の萌芽 ◇

 かげろうお銀の登場以降、伝奇要素を取り入れくノ一お色気アクション路線を強化していった「水戸黄門」。実はこの時期、新しい創作下着が生まれています。 22部('93年)1話の入浴シーンで男装の中野みゆきが着用しているのは、なんとふんどし状の前垂れ布がついた短い腰巻なのです!
  遡れば17部('87年)の第4話では多岐川裕美が、同じ22部の第25話では「くノ一忍法帖」にも出演していた水野美紀が着流しの裾を大きく割ってこのふんどし風腰巻を着用したとおぼしきセクシーふんチラを見せてくれます!

 TV 時代劇の世界では女優は着流しを着てもさがりは着用せず、裾を割って足を出したりすることはほとんどありません。
 しかし 同じC.A.Lの 「江戸を斬る」シリーズ('75〜81年)の場合、紫頭巾を演じる松坂慶子はさがりをつけず、半ダコを着用してかなり大胆に太ももを見せていました。そこから推察するにC.A.Lにはまず太ももお色気路線があり、露出を嫌う硬派女優やアイドルに男装させる際に多少は太ももを隠せる創作下着=ふんどし風腰巻を生み出したのかもしれません。
  細かい裏づけは取れていませんが、もしそうならTV時代劇の世界で女剣士のふんどしエロスに先鞭をつけたのもC.A.L、ということになります。くノ一ブームも女ふんどしも 元を糺せば同時に生まれた双子のような関係であり、根は一緒なのでしょうか? この仮説の裏付けには今後のさらなる調査研究が必要です。
             
 
     
ふんどし風腰巻
(中野みゆき着用)
水戸黄門
第17部第4話
水戸黄門
第22部第25話
 
  そして「くノ一忍法帖」と同じ「SUPER時代劇」シリーズではひっそりと本物の女ふんどしが誕生しています! 「女犯十手裏仕置II」('95年)に登場したこのふんどし、捕らわれた妾が緊縛拷問されて腰巻がはらりと落ちると下に薄桃色のふんどしを締めていた、というもの。実際に裸の女優に一本布を巻きつけた、これぞ女ふんどし!と言える本格派です。寡聞ながら筆者の知る限りでは一般時代劇初の快挙!と思われます。
  同時期にVシネマ「江戸むらさき特急」('95年)でも女ねずみ小僧を演じる森永奈緒美がまわし状の見せふんながら赤ふんヌードを公開しています!
  TVよりも過激な表現が可能なVシネマの世界で女ふんどしが再発見されたのもしごく当然のなりゆき、と言えるでしょう。

 その動きと前後して、AVでは既に本格的なふんどしくノ一物が誕生していました! シネマジックの「緊縛忍法帖 くノ一狩り」('92年)で露木陽子が、GIGAの「拷問1」('95年?)では紺野早紀が、魅力的なふんどしくノ一を演じています。それぞれ締めているのはしっかりした六尺褌! また制作年代など詳細は不明ですが、不二企画の「女剣士・二人切腹」という戦に破れた女剣士が切腹するビデオもあります。
  大分遅きに失した感はありますが、昔からSM雑誌の時代小説やイラストの世界では当たり前だった女ふんどしが、ここにきてようやく具現化したというのは素晴らしいことです。時代劇でも当然こうあるべきだったのですから。
  ただ、衣装はどちらも忍者装束であり、ミニスカ着物のセクシーくノ一がふんチラアクションでユーザーの目を楽しませるようになるのはまだ先のことでした。
(この項つづく)
                     
           
女犯十手裏仕置II
江戸むらさき特急
緊縛忍法帖
拷問1
女剣士二人切腹
 
 

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